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適切な意思決定支援に関する指針

適切な意思決定支援に関する指針(2025年4月1日 作成 Ver.1.1)

Ⅰ.基本方針

医療機関は、患者や家族と十分な信頼関係を築いて医療を行う責務がある。特に、人生の最終段階における医療においては、患者に適切な情報の提供と説明を行い、患者本人による決定を基本としたうえで、医療・ケアを進めることが最も重要な原則である。これらについては、通常の診療において、すでに経験的にも行われていることであるが、より質の高い医療を提供するにあたり、本指針を参考にすることが望ましい。

岐阜県総合医療センターでは、人生の最終段階を迎える患者がその人らしい最期を迎えられるよう、「人生の最終段階における医療・ケアプロセスに関するガイドライ ン」を中心に、「Ⅴ.参考資料」に示す学会等で策定されたガイドラインなども踏まえ、患者及びその家族と主治医を含む現場の医師及び看護師等の医療関係者で構成されるチーム(以下、医療・ケアチームという。)とで十分に話し合い、患者の意思と権利 が尊重されたうえで、適切な意思決定を行えるよう努める。

また、方針の決定が困難と考えられた場合においては、コンサルテーションが可能な体制を活用する。 なお、本指針は生命を短縮させる意図を持つ積極的安楽死は対象としない。

Ⅱ.用語の定義及び対応方針

「人生の最終段階」とは、

  1. がん末期のように、予後が数日から2~3ヶ月と予測できる場合
  2. 慢性疾患の急性憎悪を繰り返し予後不良に陥る場合
  3. 脳血管疾患の後遺症や老衰など数ヶ月から数年にかけて死を迎える場合
  4. 集中治療室等で治療されている急性重症患者に対し適切な治療を尽くしても救命の見込みがないと判断される場合

などが挙げられるが、どのような状態が「人生の最終段階」であるかは患者の状態を踏まえて、医療・ケアチームによって判断する。

「DNAR(Do Not Attempt Resuscitation)」とは、

心肺停止時に、心肺蘇生行為を行わない医師による指示のことをいう。心肺停止時の心肺蘇生行為とは、心臓マッサージ、電気的除細動、気管挿管、人工呼吸器の装着、強心剤の投与など心肺蘇生のためのすべての手技、処置、投薬を指す。いわゆる終末 期状態の患者に対する治療方針の選択とは異なるので、混同してはならない。
患者、家族からの要請(事前指示書あるいは口頭で明確な意思表示)が出された場合、それをもとに医療・ケアチームは患者、家族とその後の方針を検討する。DNAR指示を考慮する時期については、患者の病状や理解能力、感受性などを考慮し、画一的ではなく個別的に対応する。

Ⅲ.人生の最終段階における医療及びケアの方針の決定手続

人生の最終段階における医療行為の開始・不開始、医療内容の変更及び中止の判断 が大変難しい場面がある。特に中止に際してはその判断に苦慮する場面が多く、患者の死亡に結びつく場合もある。従って、医療・ケアチームが人生の最終段階における医療及びケアの方針決定を行う際は、慎重でなければならない。また、患者が望む場合、医療・ケアチームは可能な限り疼痛やその他の不快な症状を緩和し、患者及び家族等の精神的・心理的・社会的な援助も含めた総合的な医療及びケアを行う必要がある。
そのうえで、人生の最終段階における医療及びケアの方針決定における基本的な手続きは次によるものとする。

(1)患者の意思が確認できる場合

  1. 方針の決定は、患者の状態に応じた専門的な医学的検討を踏まえたうえで、医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされることが必要である。 そのうえで、方法の選択・決定に際し、患者と医療・ケアチームとの合意形成に向けた十分な話し合いを踏まえた患者による意思決定を基本とし、方針を決定する。
  2. 患者の意思は、時間の経過、心身の状態の変化、医学的評価の変更等に応じて、変化しうるものであることから、医療・ケアチームにより、適切な情報の提供と説明がなされ、その都度患者と十分な話し合いを行い、患者の意思を確認す ることが必要である。この際、患者が自らの意思を伝えられない状態になる可能性もあることから、家族等も含めて話し合いが繰り返し行われることも必要である。
  3. このプロセスにおいて話し合われた内容は、診療録に記録する。
DNAR 指示の決定に関する方針

意思決定能力のある患者はいつでも「DNAR指示」を要請できる。要請を受けた主治医(担当医)は速やかに患者、代理意思推定者(家族など)と協議を行なわなければならない。この際、客観的な医学的判断の妥当性を評価し、この文書における患者の意思が尊重される。

(2)患者の意思が確認できない、あるいは困難な場合

患者の意思確認ができない、あるいは困難な場合には、次のような手順により、 医療・ケアチームの中で、慎重に医療上の判断を行う必要がある。

  1. 家族等が患者の意思を推定できない場合には、医療・ケアチームは患者にとって何が最善であるかについて、患者に代わるものとして家族等と十分に話し合い、患者の意思を推定するよう努め最善の医療方針をとることを基本とする。 さらに、時間の経過、心身の状態の変化、医学的評価の変更等に応じて、このプロセスを繰り返し行う。
  2. 家族等がいない場合及び家族等が判断を医療・ケアチームに委ねる場合は、医療の妥当性・適切性から判断して、患者にとっての最善の医療内容を検討することを基本とする。また、緊急の場合で家族がやむを得ず医療内容の判断を医療・ケアチームに委ねる場合も同様とする。なお、その決定内容については家族等へ丁寧に説明し、十分に理解を得るよう努める。
DNAR 指示の決定に関する方針

患者の意思決定能力がある時に書かれた「終末期状態で心肺蘇生行為を拒否することを明示した文書」(事前指示書)がある場合は、客観的な医学的判断の妥当性を評価し、この文書における患者の意思を尊重しなければならない。

(3)複数の専門家からなる話し合いの場の設置

上記(1)及び(2)の場合における方針の決定に際し、以下の場合等については、メディエーターを通じて、臨床倫理コンサルテーションチームへの相談、さらに重大案件と判断した場合は臨床倫理委員会での協議など、医療・ケアチーム以外の者を加えて、治療方針などについて検討及び助言を行う。

  1. 医療・ケアチームの中で、心身の状態等により医療・ケアの内容の決定が困難な場合
  2. 本人と医療・ケアチームとの話し合いの中で、妥当で適切な医療・ケアの内容についての合意が得られない場合
  3. 家族等の中で意見がまとまらない場合や、医療・ケアチームとの話し合いの中で、妥当で適切な医療・ケアの内容についての合意が得られない場合

Ⅳ.その他意思決定支援が困難な場合

(1)認知症等で自らが意思決定をすることが困難な患者の意思決定支援

障害者や認知症等で、自らが意思決定をすることが困難な場合は、厚生労働省が作成した「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定ガイドライン」 を参考に、出来る限り患者本人の意思を尊重し反映した意思決定を、家族及び関係者、医療・ケアチームや認知症ケアチーム等が関与して支援する。

(2)身寄りが無い患者の意思決定支援

身寄りが無い患者における医療・ケアの方針についての決定プロセスは、本人の判断能力の程度や入院費用等の資力の有無、信頼できる関係者の有無等により状況が異なるため、介護・福祉サ ービスや行政の関わり等を利用して、患者本人の意思を尊重しつつ厚生労働省の「身寄りがない人の入院及び医療に係る、意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」を参考に、医療・ケアチームやソーシャルワーカー等が関与して、その決定を支援する。

Ⅴ.参考資料

  • 人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン厚生労働省(改定 平成30年3月)
  • 人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン 解説編 厚生労働省(改定 平成30年3月)
  • 認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン 厚生労働省(平成30年6月)
  • 身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関する ガイドライン 山縣 然太朗(令和元年5月)
  • 人生の最終段階における医療・ケアに関するガイドライン 日本医師会(令和2年5月)  
  • 終末期医療のあり方について-亜急性型の終末期について- 日本学術会議(平成20年2月)
  • 終末期医療に関するガイドライン~よりよい終末期を迎えるために~ 全日本病院協会(平成28年11月)
  • 救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン~3学会からの提言~ 日本救急医学会等(平成26年11月)